読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

片岡タイムズ

GSL編集部、UPSETでの活動記録

【バスケットボールの教科書<3>チームマネジメント基礎】

【バスケットボールの教科書<3>チームマネジメント基礎】
※勝手な書評です。自分で購入して、生意気にも書評なんぞを書いている次第。

 

f:id:KataokaTimes:20170324161636j:plain

 

マルボロなどのタバコを扱うフィリップ・モリス社。代表ブランド「マルボロ」。医薬品会社のメルク(Merck)。両者の志向性は異なる。だが、共通点もある。それぞれの理念が浸透している点。「選択の自由という権利は守るに値する」。これは、前者の理念。「マルボロ」の広告には、荒野でタバコを片手に遠くを眺めるカウボーイの姿が利用される。選択の自由とは、喫煙の自由、自分が欲しいものを買う権利。あの姿に、人間の自由を凝縮させているらしい。後者。「当初の成功とは、病気に打ち勝ち、人類を助ける事を意味する」理念に従い、世の中に医薬品を送り出してきた。

 

 

本書は、株式会社ERUTLUC代表 鈴木良和氏による4部作の第3弾。バスケットボール指導における盲点や、競技特性の本質、技術の深淵を語った前半2作に比べると、技術論からは離れる。本人も「技術と戦術はチームという組織を構成する要素の一つ」と語られる第3の書籍がこれだ。冒頭の言葉は、チームピラミッドの礎の一つ「理念」で語られている内容の引用。

 

 

読者は、この書籍を通じて、2種類の智慧を獲得する。一つは、「偉大な組織」を目指す中で、理念、規律、環境などを構成する全体像と、一つ一つを構成するパーツへの深い理解であり、有機的に繋がる知識。

 

 

本書籍の主題でもある「チームマネジメントのピラミッド」は、ビジネス書を読み進める中での着想のヒントを得て考案された哲学だ。ビジネス書や、心理学の世界で有効とされた様々な知見が、鈴木氏の視点で解説される。まず、素晴らしい導入書となる。かつ、バスケットボール指導の具体例と共に語られるから、指導者や、この競技に関わる人間には分かりやすい。この内容に深く共感し、発見する瞬間を味わえるのは、世間から、マスコミからの注目を集めずとも、バスケットボールを愛してきた者の特典であるとさえ思える。

 

もう一つは、著者である鈴木良和氏の思索の積み重ねを想像する楽しさだ。「世界で最もビジョナリーなコーチチーム」の構築を目指すERUTLUCの取り組みの現在進行形の知るとともに、その成り立ちや、着眼点にもハッとさせられる事は多い。

 

具体例を一つ。「責任」や「信頼」の項目では、コーチのちょっとした言葉や約束と、それに対する選手の困惑が、同社での指導現場での出来事として紹介されている。これは、保護者からのクレームだったのか、それとも担当コーチ自身の告白なのかは分からない。だが、いずれにしても、組織として問題点を整理し、次へ改善していった軌跡を読み取れる。
(詳しくはP.64「口に出したことは必ずやり遂げるという責任感」P.40「言葉に責任を持つ」の章を参照)。

 

 

冒頭の「理念」について。ピラミッドの左端。礎だ。それに影響を与える因子として「環境」がある。理念を体現する為には、仕組みやルールや、それを体現したものでなければならない。前述の、フィリップ・モリス社の社員に「選択の自由」が無ければ、大いなる矛盾である。コーチが掲げるバスケットボールチームの理念と、チームの力学(選手起用、コーチの選手への振る舞い、評価方法など)に乖離は無いか、大小問わず、何かしらの形でチームを抱える人間には永遠のテーマである。

 

 

これはほんの一例。もはや経営指南書のレベルだ。(ここで私がMBAでも取得していれば説得力があるのだが、何も資格がないので、何となくたわ言を偉そうに言っていると思っていただいて構わない)。

 

 

また、本書を読み解くうえで、鈴木氏も大いなる敬意を持っているジョン・ウッデン氏の「成功のピラミッド」の存在を忘れてはならない。「勤勉」と「情熱」の重み。分かる人には分かる。そして、頂上にあるCompetitive Greatness、あえて競争力とは書かない。勤勉と情熱を礎として、何を、どう積み上げていけばよいのか。その一例を視覚的に認識できる芸術品だ。

 

 

偉大なチームが増えると、どうなるか。

 

 

例えば、偉大ではなく、信頼関係が欠如したチーム。部活動を引退して10年後の同窓会を想像してみたい。青砥駅の「おくぼ(芋焼酎が絶品だ)」か、南越谷の「福千(焼き鳥が美味しい)」飲み会のトークを想像したい。おそらく、こんな会話は多い。学校の周りを20週走らされた。3メンを100本連続インするまで5時間も掛かった。喧々諤々。そんな同窓会は寂しい。2回目、3回目の開催は無く、自然消滅してしまうのではないか。

 

 

偉大なチームで過ごした同窓会はこうだ。ある時、チームのエースが理念に大いに逸脱する行為をし、規律を乱す。顧問は、主将と話をした上で、断固たる決意で、その選手を罰した。他の部員も、その決断を受け入れた。だが、エースがいなければ試合には勝てない。異を唱える選手もいた。部員と顧問を交え、チームの理念は何か。何に価値があるか、勝利とは何か、勝利の末に何を掴みたいのかを話し合う。結局、最後は主将に一任。主将は、その選手を試合に出さないことを決める。エースの選手は、幼少期からの親友だった。それでも、主将には絶対に譲れない、大切にしたい価値観があった。その時の事を思い出す。

 

深い部分での話が盛り上がれば、注文も増え、楽しいお酒も進み、議論は白熱する。おくぼ、福千の売り上げもさらに上がるだろう。

 

閑話休題

 

ピラミッドの上位を構成する価値観「卓越性」「偉大」は最終作へ持ち越し。副題は「指導者の哲学と美学」。ここまで、論理的に語ってきた中で、最後の着地点が美学。善悪で線引きできない領域。この言葉のチョイスも憎い。

 

最後にくだらない話。

 

バスケットボールの教科書は「タモリ倶楽部」で取り上げられるべき書籍である。少なくとも、番組会議で検討されてもいい。鈴木良和氏が、このピラミッドを軸に、これまでの取り組みや哲学を語る。ゲスト兼MCにはガタルカナルタカ。たけし軍団の理念や、エピソードが要所で紹介され、タモリが酒を飲み、組織の中にいるロクでもない奴を語る。ゲストは、なぎら健壱や、東京03や、オードリーの若林とかが良い。飯塚とガダルカナルタカのMC対決も見物。

 

 

ERUTLUCさんの3つのミッションはこちら。

・より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する
・チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する
・世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る

 

<参考>

鈴木良和さんのブログ
http://ameblo.jp/basketballtutor/entry-12252626668.html
おくぼ(東京都葛飾区青戸3丁目33−6)
https://okubo.jimdo.com/
※鈴木さんのお母様のお店です。
http://ameblo.jp/basketballtutor/entry-12087489473.html

福千(埼玉県越谷市南越谷2-3-20 飛松ビル102)