片岡タイムズ

片岡タイムズ

GSL編集部、UPSETでの活動記録

Dave Taylorさんが再来日

【Dave Taylorさんが再来日】

 

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「エースプレイヤーだとしてもチームの理念やルールを逸脱していれば理由を説明してベンチに座っていてもらえばよい。目の前の試合には負けるかもしれないが、出場する選手はコート上での役割が増えて成長の機会となる。ベンチに座っている選手にも、映像や理由と共に、コーチの哲学を伝える。きちんと伝われば、彼にとっても成長の機会となる。(目の前の)勝利を追うか、選手の成長を追うか。その違いだけ。負けたとして、何か問題でもあるのでしょうか?」

 

「もし、チームの理念や大切にしている価値観に納得して頂けないなら、その選手にはチームを去ってもらうしかない。全ての人を幸せにすることは出来ないのだから」

 

「コーチやチームが大切にしている価値観や理念を明確にしてスタートすることが必要だ」

 

「John Woodenさんは、相手チームのスカウティングよりも、自分のチームのスカウティングを重視していた。自分のチームがどうすれば、より良くなるかを常に考える。そこが他のコーチとの違いであると思う」

 

「高校の指導をしている際、大差で勝ったことを報告した。点差よりも、よりよく出来る事は他にないのか、選手、指導者はベストを尽くしたかどうかを質問された。John Wooden氏の哲学を改めて感じる機会であった」

 

Dave Taylorさんが再来日します。主な活動は、St. Mary's International Schoolで開催されるTokyo Skills Basketball Camp。キャンプディレクターは、知る人ぞ知るKris Thiesen。

 

詳細は下記(UPSET内のページ)

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=1245478005529366&id=242505029160007

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=1242656369144863&id=242505029160007

※UPSETでもキャンプTシャツを制作中。協賛・協力・応援イベント。見学を希望するコーチの方の参加枠も調整中です。参加選手への映像フィードバックなどもあり、きめ細かい。

 

上記は、1年前のキャンプや指導者講習会で語っていた印象的な言葉。”WINNING VS DEVELOPMENT!””「勝利か育成か?」というコラムでも語っている内容のとおり、ご自身のスタンスや価値観が明確。

 

補足。タイトルは「勝利」と「育成」の2項対立。ですが、決して、育成という言葉を理由に勝利を目指さないという事ではありません。簡潔に言うと「その試合だけ勝てばいい」という思想の否定。コラムの中では、「育成をしながら勝利を目指す」中でコーチに必要とされる資質や仕事が書かれています。一言でいうと「コミュニケーション」。世間話を増やそうとか、プロレスの話題で盛り上がろうとか、流行りのギャグで楽しませようとか、そういう類ではありません。チームの価値観、理念、指針の説明。成長を考えた際の、選手への指針の説明、保護者との共通認識などです。(この辺がコラムの中に書かれてはいませんが)試合には負ける事もある。その時の、負け方の美学や、どのように取り組むか、その部分の指導哲学に対して確固たる哲学を持っています。

 

 

昨年は、ERUTLUCさんの主催・共催・協力などでクリニックと指導者懇親会(居酒屋での質疑応答)、「アメリカ育成の光と闇」「ジョン・ウッデン氏から学んだこと」などをテーマに「指導者講習会」を実施。今年も何か開催できるかは、、Daveさんのスケジュールとで調整中です。

 

ERUTLUCさんレポート記事
(アメリカ育成の光と闇、ジョン・ウッデン氏から学んだこと)
http://www.basketballtutor.com/news/5704#.WMJIATuLQ2w
http://www.basketballtutor.com/news/5724#.WMJIFzuLQ2w

 

昨年は、気仙沼市から袖野君が参加。「将来を見据えた育成重視の指導方針と、目の前の試合の勝敗」との折り合いなどで、色々と思案中のテーマとも深くリンクしたようです。その数か月後、気仙沼市で開催されたバスケの勉強会のテーマは「Daveさんの講演会で学んだこと。気仙沼や沿岸地域の育成環境を考えよう」というテーマで袖野さんが講義。その旨を相談した際、Daveさんからビデオメッセージも頂きました!!ビデオメッセージを聴き、翻訳しながら、協力を惜しまないDaveさんの熱意に感動。いつまでも大切にしたい、僕にとっても貴重な出来事でした。

 

<Dave氏からビデオメッセージの翻訳>

気仙沼の皆への挨拶、袖野講師との出会い
②コーチに必要な資質、コミットメントする姿勢
③2種類のコーチ。Dave氏のスタンス。見解。
「育成」を標榜するコーチが行うべきこと、学び続ける姿勢
④MVPはいらない!というDave氏の考え方
気仙沼のコーチへのメッセージ。

※「負ける事が、何か問題なの?」「理念に同意できないならばチームを去ってもらうしかない。全ての人を幸せに出来ない」などのコメントはジュニアチームの選択肢の有無、試合形式などが日米では異なるという前提での発言をご了承ください。

 

「バスケットボールの教科書<4>指導者の哲学と美学」

【「バスケットボールの教科書<4>指導者の哲学と美学」】

※勝手な書評です。第4章は特に濃密で、とても整理しきれませんでした。

 

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『バスケットボールの教科書』シリーズも第4弾。起承転結の「結」を迎えた。サブタイトルは「指導者の哲学と美学」。ここまで、バスケ界の盲点や、見過ごされがちな部分に光を当てて、難しい現象に対して平易な言葉で丁寧に説明してきた中で、最後のテーマが「美学」で思わるのは、何処となく鈴木良和さんらしい。その理由は末尾に記載。

 

冒頭、ジョン・ウッデン氏の言葉の紹介でスタート。ウッデン氏の言葉を借りると、指導者は「聖なる任務」を与えられているという。その任務とは下記の3点。指導している選手の「人格を磨くこと」「建設的なものの考え方と価値観を教える事」「模範を示す事」。

 

 

それを踏まえ、著者は「指導者は選手たちの人生に触れている」と主張する。指導者の哲学や美学が、選手の人生に多大な影響を与える。「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」をミッションの一つとして活動するERUTLUCの代表者としても、自身が重要だと信じ、かつ、指導者が知っておくべき、哲学や科学的なデータについて、第3巻と同様、チームマネジメントのピラミッドを中心として、全146項目で語られている。

 

 

「環境」の項目では、欧州の育成環境の分析が紹介される。例えば、欧州では、年代別のチームがあり、各チームの構成人数も決まっている(12名程度)ケースも多いらしい。コーチの指導が行き届き、チーム内での競争も分かりやすい。意欲があり、熟達した選手はより高いレベルへプレー環境を変更できる仕組みがあり、高いレベルの選手同士で日常の中で切磋琢磨が可能となる。日頃の練習から、サイズや能力に任せたプレーだけではなく、より高い技術が必要となる。そうであるから、様々な技術習得が必要となる。トーナメント戦ではなく、リーグ戦を中心としたゲームスケジュールであるので、コーチも様々な戦術や選手の可能性を試しやすい。

 

 

さらに若い世代では、点数制ではなく、セット制で試合が行われている地域があるケースも紹介される。アメリカ、欧州(スペインなど)と、日本の育成環境の違いを事象として知るだけではなく、その仕組みが、コーチに与える影響、ひいては、選手に与える影響が説明される。著者は、物事の説明に「力学」という言葉を用いるが、環境や仕組みが選手に与える影響を考える際、力学という視点は非常に分かりやすい。

 

 

「意欲」の項目では、ビジネス書や心理学での理論をバスケットに落とし込んだ内容が紹介される。一例。『喜びの現象学』という著書のあるチクセントミハイ博士の提唱するフロー理論。本人の能力と課題がマッチしている際に、人間は能力を発揮するという理論である。前述の、レベルの高い選手同士が集まるスペインの育成環境との比較で考えると分かりやすいし、国民的漫画『スラムダンク』で「お前らなんか退屈」と中学校の先輩と揉めた沢北のエピソードを思い出した。(先輩にとっては、自分たちの能力やコントロールを越えた沢北の存在が、彼らにとっては不快で脅威であり、憎悪の対象であったのだ、、と勝手な分析をする視点を与えてくれる)。

 

ZPD(最近接発達領域)という単語など、聞いたことすらなかった。「自分がいまはクリアできないが、あと少し、何かきっかけがあればクリアできるという領域」の事らしい。指導者は、こういう課題を選手に与える事が重要だ、と。成程。明日から、この最近接発達領域という単語を使って、賢さのアピールをする事も可能だ。

 

 

そして、ここでも「力学」が登場だ。選手が、指導者の言う事を聞いているとする。だが、それは、指導者が選抜や評価という権限を持っているが故の「全受容のふり」ではないか、と指摘。これは耳が痛いし、自分も教わる側の時に、十二分に覚えがある。本音と建前が混在する日本社会で、これをしなかった選手がいるだろうか、とさえ思う(笑)。そういうケースがあるという事を知っているだけでも、指導する側にとっては落とし穴を防ぐ術になる。

 

 

「卓越性」の項目。勿論、卓越した存在になろう!オンリーワンになろう!という精神論では無い。卓越性とは何か、その見極め方の提案からスタートする。曰く、ナンバーワンになれるもの、成果や勝利に直結するもの、選手がやっていてワクワクするもの。

 

この3つを満たすものが卓越性へと繋がるらしい。これは、チームスタイルでも、選手個々の卓越性の見つけ方でも参考になる、勿論、指導者も同様だ。『ミッション』の著書などで知られる岩田松雄氏は、ミッションの見つけ方として3つの円の重なる部分を提唱している。好きなこと(継続して取り組むことが出来る、ワクワクしながら活動できる)、得意なこと(自分の特性を生かすことが出来る)、何か人のためになること(社会に価値を提供し、報酬や対価を得ることが出来る)の、3つの円が重なる領域の活動が、一人一人のミッションに成り得るという考え方である。

 

 

バスケットの領域で「卓越性」を意識して、成功体験、失敗体験を積んだ選手は、その経験をベースに、人生のミッションを見つける思考体験を常に積んでいるのかもしれない。

 

そして、「偉大」の項目である。チームマネジメントのピラミッドは、最下段の理念、環境、信頼、責任、規律、2段目の分析、戦術、技能、コンディション、3段目の戦略、意欲、価値観、4段目の卓越性、相乗効果の積み上げにより、最後に「偉大」へと至るピラミッドである。最後の項目では「偉大さ」を生み出す指導者の資質や、偉大さを導く考え方、必要条件が説明される。

 

これまでの書籍の中で、偉大な組織を作るためには、理念と行動が合致していなければならない事が語られた。著書の中では「一つの言葉、一つの行動に、その理念が反映されている。裏を返せば、その一つの言葉、一つの行動から、理念や価値観が透けて見えてしまう」と語られる。その中で、鈴木氏の美学が紹介されて書籍は巻末へと向かう。

 

ERUTLUCでは、指導した選手を宣伝に使わないという美学があるらしい。県の代表選手に選ばれた、日本代表に選ばれた!などの宣伝をしないことを美学としているらしい。理由は、鈴木氏が考えるコーチの定義や、目指す選手像が色濃く反映されている。このような美学から、私のような外部の人間でも、確かに理念や価値観の反映を感じることが出来た。中途半端に書いてしまって誤解を招いてしまっても恐縮なので、気になる方は書籍へ。

 

美学。自分は確固たる理念や考え方があるけど、人には人の価値観があるので、勿論、それを否定する事はしない。でも、自分は、このように考えている。本を読んでいると、温厚そうな鈴木さんの中にあっても、拘り(固執ではない)や強い意思が垣間見える。そういう領域を、さらりと、美学という言葉の中に収めているようでもある。確かに、美学という言葉が収まりが良さそうだ。うーん。

書籍の中で紹介されていたり、引用されていた書籍や理論。単体で見聞きすると、理解できる範疇を越えてしまいそうな理論も、バスケットボールの事例に置き換えて説明をして下さるので、私のような鈍才でも理解しやすい。人生を豊かにしてくれそうな考え方が沢山。

 

・「マズロー欲求5段階説」
・「フロー理論(チクセントミハイ博士)」
・「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」
・「ビジョナリー・カンパニー飛躍の法則」
・「ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階」
・「ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる」
・「タイムクエストTQ-心の安らぎを得る究極のタイムマネジメント
・「イノベーション起業家精神」PFドラッカー

 

<参考>

鈴木良和さんのブログ
http://ameblo.jp/basketballtutor/entry-12252626668.html

おくぼ(東京都葛飾区青戸3丁目33−6)
https://okubo.jimdo.com/

※鈴木さんのお母様のお店です。
http://ameblo.jp/basketballtutor/entry-12087489473.html

 

【バスケットボールの教科書<3>チームマネジメント基礎】

【バスケットボールの教科書<3>チームマネジメント基礎】
※勝手な書評です。自分で購入して、生意気にも書評なんぞを書いている次第。

 

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マルボロなどのタバコを扱うフィリップ・モリス社。代表ブランド「マルボロ」。医薬品会社のメルク(Merck)。両者の志向性は異なる。だが、共通点もある。それぞれの理念が浸透している点。「選択の自由という権利は守るに値する」。これは、前者の理念。「マルボロ」の広告には、荒野でタバコを片手に遠くを眺めるカウボーイの姿が利用される。選択の自由とは、喫煙の自由、自分が欲しいものを買う権利。あの姿に、人間の自由を凝縮させているらしい。後者。「当初の成功とは、病気に打ち勝ち、人類を助ける事を意味する」理念に従い、世の中に医薬品を送り出してきた。

 

 

本書は、株式会社ERUTLUC代表 鈴木良和氏による4部作の第3弾。バスケットボール指導における盲点や、競技特性の本質、技術の深淵を語った前半2作に比べると、技術論からは離れる。本人も「技術と戦術はチームという組織を構成する要素の一つ」と語られる第3の書籍がこれだ。冒頭の言葉は、チームピラミッドの礎の一つ「理念」で語られている内容の引用。

 

 

読者は、この書籍を通じて、2種類の智慧を獲得する。一つは、「偉大な組織」を目指す中で、理念、規律、環境などを構成する全体像と、一つ一つを構成するパーツへの深い理解であり、有機的に繋がる知識。

 

 

本書籍の主題でもある「チームマネジメントのピラミッド」は、ビジネス書を読み進める中での着想のヒントを得て考案された哲学だ。ビジネス書や、心理学の世界で有効とされた様々な知見が、鈴木氏の視点で解説される。まず、素晴らしい導入書となる。かつ、バスケットボール指導の具体例と共に語られるから、指導者や、この競技に関わる人間には分かりやすい。この内容に深く共感し、発見する瞬間を味わえるのは、世間から、マスコミからの注目を集めずとも、バスケットボールを愛してきた者の特典であるとさえ思える。

 

もう一つは、著者である鈴木良和氏の思索の積み重ねを想像する楽しさだ。「世界で最もビジョナリーなコーチチーム」の構築を目指すERUTLUCの取り組みの現在進行形の知るとともに、その成り立ちや、着眼点にもハッとさせられる事は多い。

 

具体例を一つ。「責任」や「信頼」の項目では、コーチのちょっとした言葉や約束と、それに対する選手の困惑が、同社での指導現場での出来事として紹介されている。これは、保護者からのクレームだったのか、それとも担当コーチ自身の告白なのかは分からない。だが、いずれにしても、組織として問題点を整理し、次へ改善していった軌跡を読み取れる。
(詳しくはP.64「口に出したことは必ずやり遂げるという責任感」P.40「言葉に責任を持つ」の章を参照)。

 

 

冒頭の「理念」について。ピラミッドの左端。礎だ。それに影響を与える因子として「環境」がある。理念を体現する為には、仕組みやルールや、それを体現したものでなければならない。前述の、フィリップ・モリス社の社員に「選択の自由」が無ければ、大いなる矛盾である。コーチが掲げるバスケットボールチームの理念と、チームの力学(選手起用、コーチの選手への振る舞い、評価方法など)に乖離は無いか、大小問わず、何かしらの形でチームを抱える人間には永遠のテーマである。

 

 

これはほんの一例。もはや経営指南書のレベルだ。(ここで私がMBAでも取得していれば説得力があるのだが、何も資格がないので、何となくたわ言を偉そうに言っていると思っていただいて構わない)。

 

 

また、本書を読み解くうえで、鈴木氏も大いなる敬意を持っているジョン・ウッデン氏の「成功のピラミッド」の存在を忘れてはならない。「勤勉」と「情熱」の重み。分かる人には分かる。そして、頂上にあるCompetitive Greatness、あえて競争力とは書かない。勤勉と情熱を礎として、何を、どう積み上げていけばよいのか。その一例を視覚的に認識できる芸術品だ。

 

 

偉大なチームが増えると、どうなるか。

 

 

例えば、偉大ではなく、信頼関係が欠如したチーム。部活動を引退して10年後の同窓会を想像してみたい。青砥駅の「おくぼ(芋焼酎が絶品だ)」か、南越谷の「福千(焼き鳥が美味しい)」飲み会のトークを想像したい。おそらく、こんな会話は多い。学校の周りを20週走らされた。3メンを100本連続インするまで5時間も掛かった。喧々諤々。そんな同窓会は寂しい。2回目、3回目の開催は無く、自然消滅してしまうのではないか。

 

 

偉大なチームで過ごした同窓会はこうだ。ある時、チームのエースが理念に大いに逸脱する行為をし、規律を乱す。顧問は、主将と話をした上で、断固たる決意で、その選手を罰した。他の部員も、その決断を受け入れた。だが、エースがいなければ試合には勝てない。異を唱える選手もいた。部員と顧問を交え、チームの理念は何か。何に価値があるか、勝利とは何か、勝利の末に何を掴みたいのかを話し合う。結局、最後は主将に一任。主将は、その選手を試合に出さないことを決める。エースの選手は、幼少期からの親友だった。それでも、主将には絶対に譲れない、大切にしたい価値観があった。その時の事を思い出す。

 

深い部分での話が盛り上がれば、注文も増え、楽しいお酒も進み、議論は白熱する。おくぼ、福千の売り上げもさらに上がるだろう。

 

閑話休題

 

ピラミッドの上位を構成する価値観「卓越性」「偉大」は最終作へ持ち越し。副題は「指導者の哲学と美学」。ここまで、論理的に語ってきた中で、最後の着地点が美学。善悪で線引きできない領域。この言葉のチョイスも憎い。

 

最後にくだらない話。

 

バスケットボールの教科書は「タモリ倶楽部」で取り上げられるべき書籍である。少なくとも、番組会議で検討されてもいい。鈴木良和氏が、このピラミッドを軸に、これまでの取り組みや哲学を語る。ゲスト兼MCにはガタルカナルタカ。たけし軍団の理念や、エピソードが要所で紹介され、タモリが酒を飲み、組織の中にいるロクでもない奴を語る。ゲストは、なぎら健壱や、東京03や、オードリーの若林とかが良い。飯塚とガダルカナルタカのMC対決も見物。

 

 

ERUTLUCさんの3つのミッションはこちら。

・より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する
・チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する
・世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る

 

<参考>

鈴木良和さんのブログ
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おくぼ(東京都葛飾区青戸3丁目33−6)
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福千(埼玉県越谷市南越谷2-3-20 飛松ビル102)

【バスケットボールの教科書<2>戦略と戦術の核心】

【バスケットボールの教科書<2>戦略と戦術の核心】

※広告ではなく、読みたいので自分で買って、勝手に投稿してるだけです。

 

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「バスケットボールの家庭教師」で知られる株式会社ERUTLUC代表である鈴木良和氏による全4部作の第2弾は「戦術と戦略の核心」について。偉そうにも、本書籍についても書評なんぞに挑戦。

 

この書籍は、様々な強豪チーム、著名なコーチから戦術を勉強するも、なかなか成果に繋がらずに頭を悩ませているコーチにとって特に意義がある書籍であるように感じた。「多くの指導者が勝利したチームからの成功の秘訣を知りたいという欲求」を持ちつつも、「その秘訣として取り上げられるものが戦術的な情報というのは、多くの指導者が勝利の要因として戦術に重きを置いている」と語る。そして、「成功したチームが使っていた戦術を使うことで、自分たちもチーム力が向上すると考えている」という分析の上で、そこに警鐘を鳴らす。「残念ながら戦術は単なる模倣では成果に繋がらない、それはチームによってあらゆる条件が異なるので戦略が異なり、戦略に基づいた戦術でなければ勝利の可能性を高めることは難しい」。それが理由だ。

 

 

戦術と戦略のミスマッチを解消するというだけではなく、戦略と戦術の立案方法に目を向けたのが本著の特徴。フェニックス・サンズが繰り出したラン&ガン、シカゴブルズ、レーカーズのトライアングルオフェンス、サンアントニオ・スパーズのボールムーブメントなど、レブロン・ジェームズとカイリー・アービングを起点としたキャブスのオフェンスシステム、ステフ・カリーの特徴を生かしたゴールデンステイト・ウォーリアーズのオフェンスシステムやフォーメーションプレーなど、バスケット界で注目を集める戦術についての説明は少ない。その代り、how(どのように)、そしてwhy(なぜ?)について多くの時間を割く事で、読者に思考ツールを与えようという試みがなされている。

 

 

まず、書籍は「バスケットボールというゲームの勝利の原則」の説明からスタートする。さらにいえば、ニュートン万有引力、コンパスが北を指す事をを引き合いに、「原則とは何か?」という説明が入るのが鈴木良和節か。「原則に逆らわないということは本質的な事であり、我々にとっては極めて重要なものなのです」

 

 

原則とは何かの章で強調して書かれている言葉であるが、本書を読む進めていくうえで、この言葉の真意や深さを読者は思い知らされることになるはずだ。

 

原則についての定義をしたうえで、バスケットボールを構成する様々な要素を取り出し、勝利の原則の説明へと移る。試合時間、24秒で移り変わる攻防権、3種類の得点(3Pシュート、2Pシュート、FT)など、多岐に渡る。その後、戦略、戦術の立案へ移行し、スペーシング、オフェンスの戦略、戦術、ディフェンスの戦略、戦術、リバウンドやファーストブレイクの考え方へと壮大なストーリーが流れていく。一つ一つを取り出していくのは困難なので、ここでは割愛。特にお勧めは、見開きの紙面で説明されているトピックス。P48戦略の出発点、P.82育成年代における戦術、P106オンボールディフェンスの成果と成長など。ここには、ゾーン禁止、マンツーマン推奨を「ルール」として導入したJBA側の意図や狙いを理解する一助にもなると感じた。

 

下記、極めて個人的な経験から。

 

以前、某大会の選手名鑑、チーム紹介などを担当させて頂く機会があった。自分の取材や、ある程度、各チームへのヒアリングシートなどをベースとして、観戦者の方へ、チームの狙い、コンセプト、目指すバスケットスタイルを伝える事で観戦の楽しさや、価値を高める事が冊子の目的。頂いた資料の多くのコメントの中に「チーム全員で守って、走って速攻を出したい」という言葉が並び、10数チームを担当する人間としては非常に困ったことがある。事実、バスケットボールでチームが勢いに乗るのは、守って、走って速攻である事は確か。そこを目指すのも分かるが、そこを目指す為の各チームの戦術は異なる。

 

仮にディフェンスリバウンドからの「走って速攻」を目指す中で、超巨大で、パスセンスに優れたリバウンダー(仮名:アブドル・ザ・ブッチャー)がいるチームであれば、「ウチのチームは、ちょっと高校生ぽくはないんだけど、ブッチャーがいるので、リバウンドは高い確率で取れちゃう。タフショットを打たせるか、無理なドライブをさせる事がアウトサイドの仕事で、あとは見切りで走ってしまう。ブッチャーからのロングパスでブレイクを狙いたい。変にリスクになるようならば、前線からのプレスはせずに、微妙な間合いで守る予定です」となるし、インサイド選手が不在のチームであれば「リバウンドがウィークポイント。なので、シュートされる前が勝負。

 

前線からのプレスやトラップディフェンスを増やし、その上でブレイクを狙いたい」と、「守って速攻」の中にも、各チームの色合いが異なる。戦略と戦術の立案方法に、何かしらの指標があれば、観戦する側も楽しめる。

 

例えば、青砥の居酒屋(九州の芋焼酎が絶品)での、本書の読了者であるコーチ同士の意見交換という名の飲み会があるとする。試合を見ると、全く異なる戦術を用いるコーチ同士。だが、その戦術を採用した理由や、着眼点、数字的なデータについて語り合うと、同じ嗜好性を持っていることが分かったりする。その立案方法や、選手の成長へのアプローチ方法が非常に似ていたり、そうであるがゆえの悩みも似通っていると、より深い部分でお互いの励ましあい、アイデアを出し合える。気が付けば、芋焼酎が進んでいるのも、フォーメーションやセットプレーについて話すよりも多くなるのではないか?(この見解に根拠は無い)。

 

最後に。

 

本書籍シリーズの特徴は、難しくなりがちな概念や理論を、極めて分かりやすい言葉で、かつ、読者が混乱しないように非常に巧みな構成で整理されている事。きっと、この書籍も「「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」というミッションを実現する方法の一つとして、世の中のコーチに約に立つ、さらに建設的な議論が進むような提言を意識して書かれていたのであろうと推察できる。

 

この後、書籍は後半の2冊へと続く。「チームマネジメント基礎」と「指導者の哲学と美学」。株式会社ERUTLUCで用いている「成功のピラミッド」をベースとし、それを織りなす各項目についての説明もあるようだ。各構成要素を、引力(選手にとってチームへの忠誠心を生み出したり、魅力となる事)と斥力(組織を運営、発展させていくために必要な規律など)とに分けた見解も非常に楽しみ。そして、第4弾の「美学」という言葉のチョイスが非常に秀逸。

 

 

ちょうど、WJBLのセミファイナル、シャンソン化粧品トヨタ自動車アンテロープスとの大熱戦で、丁 海鎰(チョン ヘイル)さんと、ドナルド・ベックさんの戦いぶりを見て「美学」を感じていただけに、到着が楽しみ。

 

 

鈴木良和さんのブログ
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※鈴木さんのお母様のお店です。
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※成功のピラミッド図(エルトラック版)は鈴木さんのブログより拝借しました。

【バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する】

【バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する】

※偉そうにも勝手に書評。

『バスケットボールの教科書<1>技術を再定義する』

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「バスケットボールの家庭教師」で知られる株式会社ERUTLUC代表である鈴木良和氏による書籍。全4部作は、ご本人のブログによると「起・承・転・結」を意識して構成され、「技術を再定義する」「戦術と戦略の核心」「チームマネジメント基礎」「指導者の哲学と美学」というテーマで紐づけられているという。

 

株式会社ERUTLUCの活動は、青少年に対するバスケットボールの指導だけではなく、コーチの為の学習機会の提供や、コーチ同士のコミニティ創り、海外のコーチを招いてのクリニック事業など多岐に渡る。有難いことに自分もウェアメーカーという立場から、何度か一緒に協働させて頂く機会に恵まれたが、常に企業としてのミッションを果たす活動であるかどうかを意識していることを強く感じている。3つのミッションは、部外者の自分の中でさえも、常に頭の中にあり、意識してしまう非常にパワフルなメッセージだ。3つのミッションはこう。「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指す環境を提供する」「チームスポーツだからこそできることで教育に貢献する」「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」

 

そんな個人的な経験や感慨もあり、この書籍も、ミッションを果たすための手段の一つなのだろうというスタンスで読み進めた。

 

 

第一弾の特徴は、タイトル通り、技術の再定義にある。巻末、「ここまで説明してきたことが全て正しい定義であるというつもりはありません」と注意書きを加えてスタンスを明確にしている中でも、これまでのバスケット界での基準や考え方に疑問を呈する問題提起も少なくない。それは、「日本人は勤勉と言われているが、何に勤勉になるかが重要。質の低い練習に勤勉だったり、古い習慣に固執していては、せっかくの勤勉さを成果に繋げる事が出来ません」という巻頭の提言からも読み取れる。

 

書籍では、「良いコーチの定義」にスタートし、「そもそも、なぜ定義が必要なのか」の説明でスタートする。その後、「基本が大事」とスポーツ界で言われる中で「ファンダメンタルの定義」を「技術の不足が状況への対応を妨げないようにすること」とし、生命論パラダイム、機械論パラダイムという2軸を活用して、既存のファンダメンタル習得の為のプログラムに一石を投じる。この部分が気になる方は、特に、本書籍を手に取ってほしい。

 

 

本コラム著者にとって印象的だったのは、少年期での鍛錬の必要性が叫ばれるコーディネーショントレーニングについての筆者の分析である。「リズム能力」「バランス能力」「連結能力(カップリング)」「反応能力(リアクション)」「定位能力(オリエンテーション)」「変換能力(アダプタリティ)」「識別能力(ディファレンシング)」の7つの能力で語られる各種能力について、階層構造のピラミッドで各能力を説明。「変換能力(アダプタビリティ)」を「相手の対応に、対応する能力」と定義し、7つの能力のピラミッドの最上位に配置。その選定理由、バスケットボールという競技との関りを平易な言葉で説明をしている。コーディネーション能力の7要素は知っていたが、それぞれの関係性にまでは思考が及ばなかった私には非常に興味深い考察であった。

 

第2弾は「戦術と戦略の核心」へと続く。「技術と戦術はチームマネジメントのほんの一側面でしかない」という発見からスタートしたという4部作。続編が非常の楽しみ。

 

 

<追記>


「技術を再定義する」は6つの章、計169のトピックスから構成される。各トピックスの説明は300文字程度に分かりやすく整理されている。移動時間などでトピックスを読み、考え、また読む、というサイクルにピッタリ。一番のおすすめは、青砥にある「おくぼ」で芋焼酎を飲みながら読書する事だろう。姫路に住む今井さんが東京出張の際、福井県の大西君らを交え、また一緒に行きたいものだ。

鈴木良和さんのブログ
http://ameblo.jp/basketballtutor/entry-12252626668.html

おくぼ
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※鈴木さんのお母様のお店です。
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